文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」 徒然なるまま かきまくれっ!

国語について、そして書くことについて、つづっています。

かいけつゾロリの次は何を読めば良いのか~アフターゾロリ問題2~

2017年4月7日
昨日のブログでは、『かいけつゾロリ』のあとに読書習慣がつかない「アフターゾロリ問題」について記事にしました。今日はずばり「アフターゾロリ本」を13冊紹介します。

アフターゾロリ問題とは、ゾロリシリーズを読破したあとに読む本がない、気がついたらそのポジションが漫画に取って代わられていた、ライトノベルに流れてしまって中学生になっても小説など普通の読書ができていない、そんな問題です。

 

なぜ『かいけつゾロリ』のあとに読書習慣がつかないのか


昨日のブログでもお話しましたが、国語教師の立場からこの現象を分析すると次のようになります。

1 ゾロリシリーズは、小さな子でも読めるように、漢字を少なくしてある。だからこそ読みやすいのだが、せいぜい低学年レベルの漢字しか使用していないので、ゾロリシリーズ以外で本を読み慣れていないと、漢字が多い他の本が難しく見える
2 ゾロリシリーズは絵が細かく描かれており、それが人気の秘密なのだが、「想像力で場面を描く」力がつかないので挿絵が少ない中高学年向きの本のハードルが高く感じる
3 書店で、他の児童書への流れを作っていない。
4 親が「本らしきものさえ読んでいたら、ゲームをしているよりマシ」と甘んじ、次の読書へのつなぎを放置している。


1については、書籍業界全体の問題です。例えば小学3・4年生向けの本では、小学校3・4年生までに習うものしか漢字になっておらず、このような状態は、子どもたちの成長を阻んでいると私は考えます。少なくとも中学生までに習う漢字は全て漢字にし、ルビを振ることが理想的です。読書中に漢字学習もできて一石二鳥です。
例えば、私は今、戦後の生活について文章を書いているのですが、「戦争」という熟語で使われている「戦」も「争」も4年生で習う漢字です。ですから、1年生には「せんそう」と書きます。
どうですか?
確かに1年生には「戦」も「争」も難しいでしょう。でももし、この「戦争」という言葉が出てくる度にそばに「せんそう」と振ってあったら、何回か目にするうちに覚えてしまいます。この新しいものを学ぶ力は、大人より強いものです。そうして「戦争」を「せんそう」と読むのだと分かった子どもは、テレビや新聞でこの字を見る度に、「戦争」について考えるようになるでしょう。例え子どもの拙い考えであったとしても、考えるには考えるのです。考える機会を増やすことはとても大切です。

2については、今日のブログで紹介します。

3については、書店の工夫次第。私は「本屋の学参売り場を見れば、その町の教育水準が分かる」と思っています。住むところ選びのポイントにもなりますので、この話は後日。

4については、別の問題です。これはゾロリに限ったことではなく、テレビ、スマホに育児を任せたことによる結果ですので、別の解決方法が必要です。こちらは、親が真剣に子どもと向き合うことで解決されます。この手のお話については、私はいつもお説教のように書いていますので、私のブログを読んで実行に移して下さればだいたい解決するかと思います。

 

自分の子どもはゾロリの何が好きなのか


昨日のブログで、ゾロリの内容について何が好きなのかを観察することが、次の本につなげるポイントだとしました。

怪盗だから好き
狐だから好き
お姫様を助けるのが好き
だじゃれが好き
みんなで冒険をするから好き
推理が好き


子どもそれぞれに、ゾロリにはまる要素が様々なのです。そう。そのポイントを押さえ、次の世界につなげてあげるのです。

 

アフターゾロリ本13冊の紹介


さあ、では実際に、ゾロリの次へつながる本を、果てしない読書の世界につながる入り口にある本を紹介してみます。お子さんはゾロリの何が好きか十分把握した上で読んでみてください。そして、できることなら本屋や図書館へ一緒に行き、これらの本を手に取ってみてみましょう。子どもの反応を見ながら選んであげてくださいね。

 
◆だじゃれ話

「だじゃれ」が好きなお子さんに。
イラストが原ゆたかさんです。そう、ゾロリの作者です。なので、同じ雰囲気で移行できます。
あたまのミネラル だじゃれ話 (新・日本のおばけ話・わらい話7) 単行本 – 1996/9/24
木暮 正夫 (著), 原 ゆたか (イラスト)

 
◆きむらゆういちおはなしのへや

「動物」が好きなお子さんに。
まずは好きなものから入門。
きむらさんの本は、ほのぼの+どきどき。まだ小さいお子さんのアフターゾロリ向け。
きむらゆういち おはなしのへや 5 単行本 – 2012/3/13
きむらゆういち (著), はたこうしろう (イラスト)

 

 
◆モンスターホテルシリーズ

「モンスター」「背伸び」が好きなお子さんに。
大人が読むとまた違う感想を持ちそうな本。ぜひ、お子さんと感想を共有してほしいです。この本は人気が出て、シリーズ化されました。
モンスター・ホテルであいましょう (どうわはともだち) 単行本 – 1992/3
柏葉 幸子 (著), 高畠 純 (イラスト)

 

 

 
◆ぼくはこうして生き残ったシリーズ

「サバイバル」「スリル」が好きなお子さんに。
スリルといっては失礼にあたるものもあります。サバイバル本です。ゾロリで感じた「わくわくどきどき」これがあまり幸せでない場合もある。そんな体験が出来る本です。人食いザメ事件、タイタニック号沈没事件、9.11テロ事件など、シリーズ化されています。
ぼくはこうして生き残った! 4 東日本大震災 単行本 – 2015/2/6
ローレン (著), ターシス (著), ヒョーゴノスケ (イラスト), 河井 直子 (翻訳)

 
◆こども孫子の兵法

「謎解き」「作戦」が好きなお子さんに。
孫子の兵法を子どもになんて無理なのでは? 大人の勝手なリミットが子どもの成長を阻みます。こんな戦略あるんだ! 子どもがわくわくすること間違いなし。そして、自分の生活に役立てられたら、むしろ学ばされるのは大人かもしれません。こちらもシリーズ化されており、他に「こども君主論」「こども菜根譚」があります。
強くしなやかなこころを育てる! こども孫子の兵法 ペーパーバック – 2016/3/16
齋藤孝 (監修)

 

 
◆名探偵コナン

「推理」が好きなお子さんに。『おしりたんてい』の次でも可(笑)漫画もありますが、ジュニア文庫がいいでしょう。映画を観たあとに、本を読むのが良いです。文章を追う時に映画のシーンが蘇り、読みやすいと思います。この感覚は大人の方が分かるのではないでしょうか。映画のシーンを回想しながら想像力を補うので、文字が多い本を読む練習になります。
名探偵コナン 純黒の悪夢 (小学館ジュニア文庫) 単行本 – 2016/4/14
水稀 しま (著), 青山 剛昌 (著), 櫻井 武晴

 

 
◆都会(まち)のトム&ソー

「友情」「ゲーム」が好きなお子さんに
サバイバル精神を持っているけれど、平凡な内藤内人と、大財閥の御曹司で秀才の竜王創也が、究極のゲームを作る為に都会を舞台に冒険をする話。「青い鳥文庫を卒業した少年少女たち向け」という「講談社YA!ENTERTAINMEMT」から刊行されている人気シリーズだが、学年は関係なく面白い。高学年女子にも人気。『都会のトム&ソーヤ』のファンに向けた講談社のサイトもあり、この辺との連携がうまく行っている例。現在はほとんどが文庫、Kindleになっていますが、図書館に行けばゾロリサイズの本があります。
都会のトム&ソーヤ(1) (YA! ENTERTAINMENT) Kindle版
はやみねかおる (著), にしけいこ (イラスト)

 
◆世界の妖怪大百科

「妖怪」が好きなお子さんに
「かいけつゾロリ」の世界には、妖怪がいっぱい出てきます。子どもたちは実は妖怪が大好き。ここから、ファンタジーの世界に読書を拡げるお子さんも多いのです。「なにそれ気持ち悪い」これ、禁句ですからね!
大迫力!世界の妖怪大百科 単行本(ソフトカバー) – 2015/7/2
山口敏太郎 (著)

 

 
◆水木しげる妖怪大百科

「妖怪」が好きなお子さんに。和物はこちらで(笑)
水木しげる妖怪大百科 単行本 – 2004/10
水木 しげる (著), 小学館クリエイティブ (編集)

 

 
◆生きもののふしぎ

「不思議」「生き物」が好きなお子さんに。
人気キャラクターと一緒に身の回りの不思議を観察するシリーズ。生き物の不思議を科学的に解説しています。
ピクサーのなかまと学ぶはじめての科学 (3) 生きもののふしぎ 単行本 – 2016/7/30
小菅 正夫 (監修)

 

 
◆怪盗アルセーヌ・ルパン

「事件」「推理」が好きなお子さんに。
「怪傑」繋がりです。不朽の名作を、このイラストで!最近、夏目漱石、太宰治など、古典をライトノベル化しているものが増えています。私はチープな内容のライトノベルには難色を示しますが、原作が名著なら話は別。
怪盗アルセーヌ・ルパン 813にかくされたなぞ (10歳までに読みたい名作ミステリー) 単行本 – 2017/2/28
二階堂黎人 (著, 編集), 清瀬のどか (イラスト)

 

 
◆シャーロック・ホームズ

「事件」「推理」が好きなお子さんに。
探偵物はこちら。「アフターおしりたんてい」でも(笑)こちらも原作がしっかりしているので、面白いのは保証付き。
イギリス文学への流れもつかめます。
シャーロック・ホームズ (はじめてのミステリー 名探偵登場!) 単行本 – 2017/1
アーサー・コナン ドイル (著), 石田 文子 (翻訳)

 

 
◆アガサクリスティー

「事件」「推理」が好きなお子さんに。
こちらも原作がしっかりしているもの。気に入れば、文庫本への流れも作れます。お母さんで好きだった人も多いのでは?映画になっているものも多いので、親子で楽しめるかもしれませんね。
ミス・マープル (はじめてのミステリー名探偵登場!) 単行本 – 2017/1
アガサ クリスティー (著), 中尾 明 (翻訳)

 

お子さんが何に興味を持っているのか一番分かるのはお母さん


お子さんを二人持つ、フランスに行ってしまう友人が、「フランスに船便で送る日本の児童書を選んでほしい」ということで、買い物に同行しました。二軒の本屋をはしごし、二人のお子さんたちと話をしながら、好きな本を数冊ずつ選定しました。船便で送る予定だった本なのですが、帰ってすぐに読んでしまったとか(笑)お子さんたちの好みにぴったり合っていたのでしょうね。
母親としては、もっと立派な本を読んでほしいと思う人も多いようですが、まずは興味のある分野から世界を拡げてあげましょう。本屋に行けば、本があふれています。子どもたちは自分に合う本を探すことがなかなか難しいようです。
先日も書店に行った時に、お子さんが図鑑に手を伸ばそうとしたところ「もう図鑑はたくさん!高いし。もっと小さくていい本にしなさい」と叱っているお母さんがいました。その子は図鑑が好きなのでしょうか、それともその図鑑が取り上げている題材が好きなのでしょうか。それによっても選んであげる本は違いますよね。
もし、図鑑そのものが好きなのであれば、図鑑を買ってあげてほしいですし、高額でいやだというのであれば、私ならインターネットの使い方を教えてしまいます。それが図鑑代わりになりますから。それか、博物館や科学館へ連れて行きます。動植物が好きなら動物園や野外観察がいいでしょうね。もし、取り上げている題材が好きなのであれば、その題材が載っている児童書を探してあげればいいのです。

その子が目を輝かせて、自分の好きなことをどんどん広く拡げて、どんどん深く追究していく。 想像しただけでわくわくしますよね。

「もっといい本にしなさい」は大人の都合。もし、あなたが「あ、これ読みたいな」と思って本を手に取ったとたん、人から「もっといい本にしなさい」なんて言われたらどんな気持ちになりますか? お子さんの興味・関心を一番知っているのは、知る位置にいられるのはお母さんです。「アフターゾロリ問題に悩むお母さんは、もっともっとお話をして、子どもが何に興味を持っているか分かってあげるようにしてくださいね。

 

 
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