文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」 徒然なるまま かきまくれっ!

国語について、そして書くことについて、つづっています。

かいけつゾロリの次は何を読めば良いのか~アフターゾロリ問題1~

2017年4月6日
30歳以下の子どもを持っている人、またはあなたが30歳以下である場合、『かいけつゾロリ』を知らない人はいないはず。そう、どこの本屋の児童書コーナーにも必ず置いてある、しかも平積みしてある、あのシリーズです。なんと今年で30周年とのこと。最新号は第60巻。今日明日と連続し「『ゾロリ』のあとに何を読ませればいいのか迷っているうちに、漫画やライトノベルに行ってしまったんです!」と「アフターゾロリ問題」に嘆くお母さん達の悩みにお応えします。

 

売れるはず! 『かいけつゾロリ』 に施された様々な工夫


『かいけつゾロリ』 はとても面白い児童書です。いきなりゾロリ擁護論ですが、私は 『かいけつゾロリ』 は子供の心をつかむ色々な工夫がされている、とても素晴らしい本だと思います。だからこそ、30年間もの長い間、人気なのでしょう。
「朝の読書推進協議会」の平成27年度「朝の読書」の人気本調査結果でも 『かいけつゾロリ』 は堂々1位を取っています。
(参考)
平成27年度 朝の読書(学校)で読まれた本
また、現役東大生100人のうち8割の人が読んだことがある、また、9割の学生が「今の子どもたちに読ませたい」と推薦する本でもあります。
(参考)
News Lounge「現役東大生100人のうち9割が『今の子どもたちに読ませたい』と絶賛した児童書」

ちなみに、今大学生の私の息子も、どっぷりはまりました。第38巻・39巻連続の『なぞのおたから大さくせん』ぐらいまでは我が家にあったような記憶があります。『かいけつゾロリ』 には、本文に混じって迷路が掲載されていたり、カバーの裏にもしかけがあったりと、子供の心をくすぐる芸の細かいネタがしこんであります。また絵や図も細かく描き込まれていて、1ページ1ページに秘密がいっぱい詰まった宝箱のような本だと思います。子どもが夢中になるのが分かる、そう思える本です。

 

『かいけつゾロリ』 に上手に乗る


また「おやじギャグ」や「だじゃれ」も特徴です。私はこの二つは国語教師としてかなり強く薦めています。「おやじギャグ」は韻の勉強になりますし、「だじゃれ」は、同じ音で違う意味を持つ言葉、そう同音異義語の学習に繋がります。特に「だじゃれ」に関しては教材にもしています。息子は 『かいけつゾロリ』 の「だじゃれ」に触発され、幼稚園時代に「だじゃれ辞典」を作りました。ノートに五十音すべてを使っただじゃれを書き込んでいたのです。「コンドルがかんがえコンドル」「ふとんがふっとんだ」などです。5歳にしては大がかりなプロジェクトに挑戦したと思うのですが、やり遂げたのは偉いと思いました。
もし、今 『かいけつゾロリ』 にどっぷりはまっている幼稚園、小学校低学年のお子さんでしたら、そのような利用もお勧めします。本の中で使用されているだじゃれを書き写すだけでもそうとう勉強になると思います。

 

新ライバル登場!


『かいけつゾロリ』 の魅力といえば「おなら」「うんち」です。幼稚園児から小学校低学年までの男子の「ザ・ツボ」ですね。以前、テレビで香取慎吾さんが「『うんち』で笑わなくなったら大人になった証拠」と言っていたことを思い出します。それくらい長い期間、男の子達のキーワードなんですね。
「うんこドリル」というものも登場しました。3,4年生だけ売り切れているのよ、という友人の証言を確かめるべく書店を覗いてみましたが、本当にその通りでした(笑)
日本一楽しい漢字ドリル うんこ漢字ドリル 小学3年生
単行本(ソフトカバー) – 2017/3/18 文響社(編集) (著)

 
 

おそるおそる「うんこ漢字ドリル」3年生を見てみました。漢字のマスが全てうんこの形をしています。
そして「春」の漢字では「春らしい色のうんこだ」、「父は青春時代によくうんこをもらしたそうだ」などの例文が! これはたまりません。漢字を書かずにはいられないでしょう(笑)
男の子の、何かで揃えたい心理もよく分かっています。ちなみに、私の小学生講座では、例文を書くときに全96文を全部「おばあちゃん」で揃えた子と全部「野球」で揃えた子がいました。
ほんと、男子って面白いですね。

さて、最近、このお下品キーワード界隈で 『かいけつゾロリ』 の新しいライバルとなる児童書が登場しました。お母さん達にその名前を言うと「あぁ……」と落胆の表情をされます。
おしりたんてい かいとう VS たんてい
単行本 – 2017/3/9 トロル (著)

 

 
内容は、推理小説の児童書版といった感じで、とても良いものです。内容は。
じっくり考え、観察力も洞察力も付くようなしくみになっています。ただ、主人公がお尻で、いわゆる排泄する部分から紅茶を飲んだりパイプを吸ったりします。シュールです。この本も子どもが好きそうな内容です。 『かいけつゾロリ』 に追いつくことができるか、見ものですね。

 

 

『かいけつゾロリ』の次に進めない子どもたち


このように、誰もが大好きな 『かいけつゾロリ』 ですが、一つ問題がありました。 『かいけつゾロリ』 の後に読む本が見つからないという問題です。長年国語指導をしていますが、この問題に関しては毎年質問が来ます。たいていのお子さんは小学校1年生から3年生の間にこのシリーズと出会い、図書館などから順番に借り、全巻制覇を目指します。全巻揃えている、みんなの憧れのおうちから借りる方法もありました。ゾロリはとても面白く、みんな何かに取り憑かれたように読むので、親は一瞬「我が子に読書習慣がついた」と思います。ところが、ゾロリシリーズのあとに読書が続けられないという事態になっています。気がついたらそのポジションが漫画に取って代わられていたライトノベルに流れてしまって中学生になっても小説など普通の読書ができていない、そんな悩みを伺います。

 

国語教師の立場からこの現象を分析すると次のようになります。

・ゾロリシリーズは、小さな子でも読めるように、漢字を少なくしてある。だからこそ読みやすいのだが、せいぜい低学年レベルの漢字しか使用していないので、ゾロリシリーズ以外で本を読み慣れていないと、漢字が多い他の本が難しく見える。
・ゾロリシリーズは絵が細かく描かれており、それが人気の秘密なのだが、「想像力で場面を描く」力がつかないので挿絵が少ない中高学年向きの本のハードルが高く感じる。
・書店で、他の児童書への流れを作っていない。
・親が「本らしきものさえ読んでいたら、ゲームをしているよりマシ」と甘んじ、次の読書へのつなぎを放置している。


 

国語教師が紹介するアフターゾロリへの道


さあ、耳が痛いとこの記事から離脱しそうになる前に、アフターゾロリへの動線を紹介します。まず、自分のお子さんがゾロリのどの部分に魅力を感じているのかを見極めましょう。ゾロリは様々な工夫がされていますが、付録やカバーなどの「売る工夫」ではなく、ゾロリの内容について何が好きなのかを観察するのです。

怪盗だから好き
狐だから好き
お姫様を助けるのが好き
だじゃれが好き
みんなで冒険をするから好き
推理が好き


子どもそれぞれに、ゾロリにはまる要素が様々なのです。そう。そのポイントを押さえ、次の世界につなげてあげるのです。例えば、私の子どもは、「怪盗」「推理」っぽいものが好きだということが分かり、そこから、名探偵コナンのノベライズ本、シャーロック・ホームズシリーズ、そしてイギリスつながりでハリー・ポッターシリーズへ流れました。ハリー・ポッターシリーズは、挿絵も少なく、字も小さい上に難しい言葉がいっぱいです。でも、彼は、必要に迫られ辞書を引きながら、8歳でハリー・ポッターシリーズを読破しました。

明日は、いよいよ具体的なアフターゾロリの児童書を紹介します!

この記事を書く為に、最新刊を買おうとしたら、こんな素敵な本が!
かいけつゾロリぴあ (ぴあMOOK) ムック – 2017/3/31

 
 

ゾロリ世代の人たち向けですが、今ゾロリにはまっている子ども、ゾロリを卒業した子ども、ゾロリで悩んだ親、全てが楽しめるムック本です。いやー、面白いです。降参です!

それでは、明日のアフターゾロリ問題、解決編をお楽しみに!

解決編を書きました。

 

 
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