文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」 徒然なるまま かきまくれっ!

国語について、そして書くことについて、つづっています。

大人が用意してはいけないもの

2018年9月15日
葛飾区にある、絵と言葉のライブラリー「ミッカ」

http://micca.me/

子どものための小さな図書館と名乗っています。確かに小さいし、図書館でもあるのですが、そこには何か素晴らしく大きな可能性のにおいがプンプンする、そんな場所でしたよ。

 

ミッカの本には管理シールが貼っていない


「本って表紙が美しいと思いませんか? トータルデザインされた、こんな素敵な表紙に、あのシールがあるだけで幻滅しませんか?」

そう語るのは、ミッカの館長山本さん。小さいころから図書館を作るのが夢だったそう。「リリオ亀有リノベーションプロジェクト」でミッカの館長に抜擢されたストーリーはまたいつか。人間としても魅力溢れる若くてかわいくて聡明な女性。

 
「本に番号が振っていないことにより、子どもたちは想定外の場所に本を戻すんですね。『ほお、ここに戻すんだ』という気づき、彼らのカテゴリ分けの分析が楽しい。」

普通ならジャンル別、作家別などに分類される本たち。その本たちをしかるべき位置に戻させないデザインを、本が想定外の場所に戻されることを、むしろ楽しんでいる様子です。また蔵書は3,000冊に上りますが、子供向けの本に限定せず、大人向けの本、写真集、作品集なども混じっています。こんな本、専門店でないと手に入らないのでは?そんな写真集もありました。

 
自然な出会いを設計
テーマは夏?
戻すところが分からない、迷子の本はここへ。

夜の消防車は黒い


『パパは脳科学者』(池谷裕二著)という本の中に、この一節があります。二歳の娘さんが夜の消防車は黒いというのです。

https://goo.gl/W8Yizs

 
私たち大人は「消防車は赤い」と思っていますが、本当に赤かどうか、実際に近寄って見に行ったことはありますか? 私はありません。しかも、夜の消防車。思わずググってしまったそこのあなた。同罪です(笑)そういうことじゃないんですね。私は先日夜中の2時に消防署に静かに眠る消防車を見ました。夜の消防車は、確かに昼のように赤くはないのです。うっかり赤で描いてしまう、太陽も、火も、タコも赤くなんかないんです。

 
様々な男性用トイレからピクトくんを集めたとのこと。
女性用トイレ
非常口まで
赤い本、緑の本、水色の本、紫の本。

シリーズではありません。色で集まる本たちは、家族に出会えたように幸せそうでした。
にわかに思い出した私にとって忘れられない先生の一人。小学校の図工の先生が、私が画用紙に黒い絵の具で雲の輪郭を描いた時、「本当にそこは黒いかしら?」と私の肩越しに言った言葉を思い出します。私にとってはとてもショッキングなことでした。確かに青い空と白い雲の間に黒い線は存在しないし、空の青、雲の白さえ、果たしてその色なのか?ということです。

そんなことが想起される物がミッカにありました。こちらの色鉛筆。赤だけで、緑だけで、こんなに表情が豊か。子供たちはその中から、目をキラキラさせながら自分の本当の色を探すのでしょう。
どの赤にしよう……。
 

 

安心安全を保障すると始まる子供たちの自主コミュニティ


部屋の一角に狭くて居心地のよさそうなスペースを発見。昔の「押し入れ」に該当する場所でしょうか。そういえば、あの名作『おしいれのぼうけん』も、生まれながらにウオークインクローゼットがある家に住んでいる子どもには世界観が分からないのだそう。

悪いことをすると閉じ込められた押し入れ。今では虐待とかなんとか言われるんでしょうか。さようなら、ねずみばあさん。

おしいれのぼうけん (絵本・ぼくたちこどもだ)
ふるた たるひ (著), たばた せいいち (著)

https://goo.gl/6pPUFr

 
何もかもそろった「おままごとセット」で遊ぶ子どもたちは、葉っぱで作ったお皿、石で作った包丁、もうカタチすらない、妄想のご飯やみそ汁も、作り出せないのでしょうね。

 
読書に没頭している子ども。ちょっと失礼……
中を覗くと……
でも、このミッカでは、こういうところで自然発生したものを大切にしています。例えばさきほどの小部屋。大人はなかなか入りにくい場所ですが、女の子たちがここで「相談」を受け付けているのだそうです。しかも「恋愛の悩み相談」(笑)

そして、張り紙を出してよいか、しばらく占拠してよいか、スタッフに問い合わせが来るとのこと。「では、企画書を書いてみて」館長の山本さんは子供たちに開催条件を出します。すると、子どもたちが一生懸命書いてくる、そして実際にやらせてみて、集客方法や実施方法の工夫をさせる。もうここは子どもたちによるコミュニティが自然発生しています。

 
おままごとセットのように、何もかも大人が設計し用意する世界とは違う、生き生きとした世界がここにはありました。この理想的なコミュニティを作るために大人ができること、それは、安心安全の場を作ってあげることなのだと思います。そのために、本をはじめ、カーテン、ソファ、明るさ、分類、トイレのマーク、様々な工夫が「こっそり」されているのです。
その他、ミッカではシアタールームで読み聞かせや落語会が行われたり、アトリエではお絵かき教室などのワークショップも開催。このミッカでは本は借りられないのですが、ちゃんと葛飾区の図書館システムとつながっており、本の貸し出しや返却にも応じているとのこと。また、隣のレストラン「クリマ」では、素材にこだわった、かなり美味しいお料理も食べられます。って、「リリオ亀有リノベーションプロジェクト」にまんまとはめられたカキマクルのゆか先生でした。

 
この日は読み聞かせ会。シアターの最後列。
アトリエでは、絵本を題材にしたハンドペインティング教室。これ、魚です。
言葉遊び誘発装置(笑)

ちなみに「ユカ」は「てゆっか~」「かっかしてる」(笑)
完全に余談
このレストラン「クリマ」のロゴと、私の事業「カキマクル」のロゴが、似ていてうれしかった。
 

 

一緒に取材に行ってくれた人

さちまるさん&ゆうゆうちゃん、ありがとう。
写真もありがとう。

 

 
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