なぜ書き順を覚えるのか
2016年3月25日
保護者の方よりメール
思った以上に書き順がぐちゃぐちゃなのに、びっくりです。
今の段階で気付けてよかったです。
ありがとうございます。
私は小学校を3回変わりました。
学年の途中での転校だったので、算数や理科、社会はともかく、国語の漢字テストでは苦労しました。
教科書が違うので、習わない字があったのです。
独学で追いつきましたが、その時に、書き順がかなりあやしくなりました。
と同時に、自分を守る為に、漢字の書き順に対し不信感を持つようになりました(笑)
漢字テストでは結果しかみない。
それなら、書き順なんてどうでもいいのでは?
わざわざ書き順を問う問題なんて、記憶力が良い子の勝ちに決まってるじゃん。
そして、半ばふてくされて漢字に向き合ううち、何かがおざなりになっていました。
高校生になり、クラスに、ものすごく美しい字を書く子がいました。
あまりに綺麗なので、自分の名前を書いてもらい、うっとり眺めたくらいです。
鉛筆を、筆のように動かして書いていました。小指が伸びているのも、おしゃれに感じました。
そして、姿勢が正しい。
何もかも美しい所作でした。
そして、筆の流れをしっかりと意識するように書いていると聞き、見よう見まねで真似したものです。
そう、書き順を覚えるということは、筆の流れを覚えるということでした。
確かに、今の文科省の教科書で決められた書き順が、
元の中国の漢字の書き順と違うことがあったり、書家によって書き順の違いがあったり、時代によっても違いがあったりします。
しかし、殴り書きではなく、漢字ときちんと向かい合うと、自ずと正しい書き順で書きたい気持ちになります。
漢字は、画数が増えると戸惑いますが、
実は簡単なパーツの組み合わせです。
例えば「護」という字は「言」と「くさかんむり」と「隹」と「又」からできています。
それぞれのパーツの書き順を知っていれば、この「護」という字の書き順を一から覚える必要はありません。
「右」という字は、なぜ左はらいから書くのか、
「左」という字は、なぜ横画から書くのか、
それもルーツを知ると分かります。
漢字と向き合うこと、なりたちを理解すること、そして、何事もていねいに行うこと
それを通じて身についた心得が、生きていく上で、いろいろな時に役立つと思います。
NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」で、日本初の女子の大学校で、何を学ばせるか、
一生懸命に考えている人がいました。
今、義務教育で習っていることも、お偉いさんがテキトーに選んだのではなく、
子どもの発達段階を考え、それにふさわしいよう内容が、多くの学者によって吟味され、決定されたのです。
少なくとも義務教育で習うことは、生きていく上での基礎になっています。
たしかに、正しい書き順を知っていることが、生きていく上でダイレクトに「得」になるわけではありません。
同じことが、算数や社会や理科で習ったことにも言えるでしょう。
しかし、その基礎を学ぶ過程で得たものは一生モノのはずです。
書き順を覚えるのが「めんどくさい」と思う子は、他のことについても同じことを言います。
以前の私のように、「書けた字が最終的にあっていれば良い」と思う子は、きっと他のことについても同じことを言うでしょう。
「そうか、そうではないのだ」と気づいて、静かに漢字と向き合った時、
何かが変わる音がすると思いますよ。