「くそ」真面目な『うんこドリル』の校正
2017年5月18日
これを超えるドリルができるのか?
私が漢字ドリルを出版する場合、これを超えなければいけないのだと、畏怖の念を感じるドリルがあります。その名も『うんこドリル』
私が作った「くそ」真面目な漢字ドリル
私が作った教材に「漢字プリント」があります。
「漢字は単独で覚えるものではない、例文の中で覚えるもの、しかも自分より少しレベルの上の例文で新しい知識も一緒に覚える」
このコンセプトのもと、例文は全てもちろん自分で考えました。さらに指でなぞる為に漢字を大きくしたプリントした別の教材もあります。それなりにしっかり時間をかけて作ったものですし、改訂もしています。 そして、例えばそれをまとめてしまえば、立派な『漢字ドリル』はできあがります。そして私が教材として14年間使ったことを思えば、普通に売れるんじゃないかと思っていました。
平積みにされたうんこ
毎年春になると書店に出向き、その年に出版された漢字ドリルを一通りチェックします。たいていは前年度改訂ものです。もちろんそれは重要なことです。そうして毎年毎年きちんと改訂し、きちんと売れ続けるので、学習教材はロングセラージャンルなのでしょう。しかし、工夫してあると言っても、せいぜい子どもの心をつかむような、キャラクターを載せていたり、シールがついていたりする程度。私が家庭教師などをする場合に、副教材として選ぶものもあります。その場合は「子どもが自分でミスをチェックしやすいもの」「お母さんが筆順をしっかり教えられるもの」などの専門的観点から選書します。そうしてマイナーな工夫はあるけれど、特段毎年変わらない。それが漢字ドリルの世界でした。
ところが今年の春は異変がありました。うんこが、もとい『うんこドリル』が、日本全国どの書店でも平積みされているのです。
これです
日本一楽しい漢字ドリル うんこ漢字ドリル 小学3年生
単行本(ソフトカバー) – 2017/3/18 文響社(編集) (著)
小学生で習う漢字は全部で1008。一つの漢字につき、3つずつ例文が書いてあります。つまり、3024の例文があるのですが、その例文全てに「うんこ」というキーワードが使われているのです。
例えば「春」の漢字では
「春らしい色のうんこだ」
「父は青春時代によくうんこをもらしたそうだ」
などの例文が書かれています。そして、 漢字のマスは全てうんこの形をしています。
これはたまりません。小学生男子なら完成させたい一心で漢字を書かずにはいられないでしょう。今までドリルを1冊終わらせることすらできなかった男の子たちが、うんこの力で達成力も付けられるのです
「うんこで笑わなくなったら大人」という男子の世界で、うんこは永遠のヒーロー、テッパンのコミュニケーションツールなのです。
「くそ」真面目な『うんこドリル』の校正
さらに驚いたことに、この例文を書いているのが、脚本家の古屋雄作さんとのこと。そして私が昨日のニュース(2017/05/17首都圏ネットワーク)で目にしたのは、学習参考書担当の校閲者と、古屋さんのうんこに関するくそ真面目なディスカッションが繰り広げられている校正原稿でした。
例えば、マイナスイメージのある例文に対し、小学生に対しうんこがネガティブなイメージになってはいけないと議論しているんです。くそまじめに!
これを見た時、自分の「ちゃちゃっとまとめたら漢字ドリルになるんじゃないかしら」という妄想がいかに甘かったかを思い知りました。
そして文響社の企画者が、綺麗な若い女性だったことにも驚きました。
『うんこドリル』については大ヒット作『おしり探偵』と共にこの記事でも触れました。
……こんな書籍名を堂々と紹介するなんて、なんだかすごく切なくなってきました(笑)
かいけつゾロリの次は何を読めば良いのか~アフターゾロリ問題1~
このドリルを超えるうんこは出るか?
訂正。このうんこを超えるドリルは出るか?(←まだ違う)
たかがうんこ、されどうんこ。子どもたちの永遠のヒーローを味方につけたこのドリルは、ドリル界のみならず、学習参考書の世界に旋風を巻き起こすこと必至です。これから漢字ドリルを出そうと思う人たちは常にうんこと闘うことになるでしょう。私も心してかからねばなりませぬ!