文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」 徒然なるまま かきまくれっ!

国語について、そして書くことについて、つづっています。

「人間たれ」

2016年11月10日
10月30日日曜日、高橋恵さんの読書会に参加しました。

本は『笑う人には福来たる』です。
この本には、ごく自然の、日本人として当たり前のこと、

しかし忙しく生きる現代の女性が忘れていたことがちりばめられています。
高橋さんの生い立ちについては、食べるものにもこまった時代のお話、お母さんが家族で心中しようと思っていたお話など、
私が今まで生きてきた50年全部合わせてもそんな辛い体験はなかったと思うようなお話ばかりでした。

その中で、高橋さんの言葉ではないのですが、戦時中の青年が、特攻に向かう直前に家族に宛てて書かれた手紙の紹介がありました。

母を慕いて

母上様お元気ですか
永い間本当にありがとうございました
私が6歳の時より育てくだされし母
継母とは言え、世のこの種の母にあるごとき
不祥事は一度たりとてなく
慈しみ育てくだされし母
ありがたい母 尊い母
俺は幸福だった
ついに最後まで「お母さん」と
呼ばざりし俺 幾度か思い切って呼ばんとしたが
何と意志薄弱な俺だったろう
母上お許し下さい
さぞ淋しかったでしょう
今こそ大声で呼ばして頂きます
お母さん お母さん お母さんと

私はiPhoneの読み上げ機能を使い、家事をしながらこの本を聞いていたのですが、
この手紙の部分でどうにもこうにも立っていられなくなり、キッチンに手をつきながら号泣してしまいました。
この手紙を出した青年が、18歳という、自分の息子と同じくらいの年齢だったからかもしれません。
この手紙を書いたあと、帰る為の燃料を持たない兵器に乗り、
彼はいったいどんな思いで、敵にぶつかっていたのでしょう。
彼は最後に誰の名を叫んだのでしょう。

高橋さんの本には、このような、心を掴んで揺さぶる様々な例がちりばめられているのですが、
その根底に流れているのは、親への愛、感謝だと感じました。
そして高橋さんのどの言葉にも、高橋さんのお母様から受け継がれた言葉が生きているのです。

もちろん、高橋さんは社会起業家でもありますので、ビジネスのヒントも沢山ありました。
しかし、起業家以前に「人間たれ」ということだと感じました。
講演の中でも、様々なお話をされるのですが、
全部の話が、人間としてどうあるべきかということに尽きるということなのです。
ビジネスはその次なのです。
そして、根底がしっかりしていない人のビジネスは、
一見成功したように見えても、土台がぐらぐらしているので、最終的に行き詰まるのかもしれないと感じました。

高橋さんは「おせっかい協会」という一般社団法人を立ち上げました。
見返りを求めない「おせっかい」を日々実行しているのですが、
高橋さんの「おせっかい」は、「おせっかい」と呼ぶに相応しくないと感じます。
「慈悲」レベルなのです。マザー・テレサと同じ「慈悲」です。

お話を聞いていると、私がこんなことできるわけがないという例ばかりだと思いましたが、
初めは隣人から、そう、身近な人から助けてあげること、
そして困っていそうな人を見かけたら「どうしようかな」と思う前に助けてあげること、
頭で考える前に、それこそ脊髄反射的に「助ける」という行動に移すことが大事だということだと悟りました。

「天知る 地知る 我知る」


「天知る 地知る 我知る」
人が見ていなくても、天が見ている、地が見ている、何より自分自身が見ている

私は、「お天道様が見ている」という言葉は好きです。
誰も見ていなくても、お天道様はしっかり見ているよ、悪いことはするなよという意味です。
だから、日が暮れた夜、悪事は起きるのだと思います。
でもここに「我知る」が加わっています。
そうです。どんなに巧妙に逃げ隠れしても、自分が何をしたかは、自分が一番知っているのです。
「天知る……」は、中国の故事ですが、
高橋さんのお母様がしっかりと子どもに伝えたかったことが、
高橋さんを通じて、もっと多くの人に伝わっていることが素晴らしいと思いました。

私も教育に携わるものとして、
子どもたちの「国語」の面だけでなく、もっと奥の深い「人間としての成長」を促すこと、
その為にはまず、自分を律することが重要であることが大切だと思いました。
そして、自分が理想の自分になるまで待っているのではなく、まず行動をして、子どもたちと一緒に成長していくこと、
このスピード感こそが最も重要であるかもしれないと感じました。
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